アイスショーを越えた音楽劇「氷艶hyoen2019-月光かりの如く-」が最高だった話をさせて欲しい※ネタバレ有り

約一年ぶりのブログです。一年ぶりのブログで、この文量を書かずにはおれなかった衝動で、どれほど凄かったかお察しいただければ幸いです。

ネタバレありありなので、誰に向けて書いているかも定かではないのですが、取り急ぎ、書かせて下さい…すごかった…最高でした…。シーン毎の感想に終始しているので、後日、もう少し冷静なもの(大事)をまとめようと思います。

フィギュアスケート×源氏物語「サマージャンボPresents 氷艶hyoen2019-月光かりの如く-」観て来ました。

アリーナステージという事で、客席が三方にある難しさがあると思うのですが、国内外のトップアスリートたち、ミュージカル・ドラマなどでご活躍の俳優陣の底力、アンサンブルの方々、衣装、音楽、照明、大道具、小道具その他すべて要素が調和し、圧倒的な力で客席を巻き込み、引っ張ることで、広い会場の客席の何処から観ても楽しめる最高のエンターテイメントに仕上がっていました。

↓しょっぱなの感想

冴え冴えとした銀盤に、スケーター達が薄紫のまあるい明かりを持って、華麗に滑り始める様を観て、私は秒で泣きました。こんなに美しい光景がこの世にあって良いものですか・・・・。

ミュージカル女優としてもご活躍の平原綾香さんによる「あの方は、月でございました―――。」というナレーションから、物語ははじまります。

冒頭は幼少期の朱雀帝と光源氏の2人が華麗に登場。どこか懐かしい童歌で、微笑ましくなると同時に、何処か切ない気持ちに。ちっちゃなスケーターさんたちの衣装が兎に角かわいいんです。兄弟全く一緒ではなく、これからの各々の成長を予感させるような色も丈も形も少しずつ違う衣装で。氷艶の衣装は、和を感じさせる美しい造形もさることながら、滑った瞬間の布のひらめきが圧倒的美しさでした。

そして幼い光源氏と入れ替わりで、氷上に飛び込むように現れた高橋大輔さん演じる青年期の光源氏。「幼かった源氏が。こんなに凛々しく、美しい青年へと成長しました――――。」という架空ベテラン俳優のナレーションが自動で脳内に流れるくらい、颯爽とした登場。子供時代と大人時代をシームレスにつなぐ事で、よりその人の成長を鮮やかに描かれた気がしました。大河ドラマ的。

弘稀殿女御を演じる荒川静香さん。一番上に纏っていた誰よりも丈の長いお着物をスッと引く立姿は、とても優雅で美しかったです。そして、その重たい着物を脱ぎ捨てた後、空気を引き裂くように氷上を走り抜ける濡烏の様な切れ味と圧倒的な禍々しさが本当に最高でした。

織田信成さんが演じる陰陽師。この世ならざる存在が顕現し、氷上の空気をかき混ぜていくような、他のキャストとは一線を画す妖しい振り付け。
仮面を剥ぎ、投げ捨てる。フィジカルのしなやかさは、競技時代に拝見した織田選手の演技と全てつながっていて。そんな織田選手らしい演技なのに、観たこともないような悪辣で妖しい雰囲気に仕上げていて、新しい織田さんの魅力を堪能させて頂きました!!!

ところ変わって平安時代の春の都。市井の人々が氷上に次々と登場・・・!あぁ、このアイスショーが日本で行われて良かった…!と感じました。これは日本じゃないと観られない。薬屋、りんご屋、花売り、魚売りetc..各々の生活の香りをさせながら、生き生きと舞い踊る姿。本当に素晴らしかったです。

そこに颯爽と現れて、女性物の衣を纏いながら、都の人々にいたずらをして回る光源氏。そこに福士誠治さん演じる頭中将が現れたのですが、氷艶オファーがあってからスケートを本格的にはじめたとは全く感じさせない、気持ちの込もった氷上の動き

藤壺と光源氏の出会いのシーンは、物理的な距離があるにもか関わらず、二人が通じ合う瞬間が…確かに見えました。セリフもなく、目線と少しの所作だけで心の機微を表現。平原綾香さん演じる藤壷が少し胸に手を添えるだけで、気持ちが痛いほど伝わって来るんですよ。

ステファン・ランビエルさんが演じる朱雀帝と高橋大輔さん演じる光源氏の和歌対決。2人で滑るというとペアやアイスダンスのイメージが強いのですが、こんな相互にヒリヒリと存在が交わるような2人滑りもあるんだ。と、競技フィギュア好きが持っていたイメージを、良い意味で覆された気がしました。ランビエルさんは圧倒的気品でまさに平安の皇太子そのもの。

鈴木明子さんの伸びやかで明るくパワフルな演技も大・大・大好きなのですが、鈴木さん演じる朧月夜の、内に秘めた感情が大きいからこそ滲み出る美しさに心打たれました。あまりにも可憐で美しくて、全く目が離せません…!おそるおそる滑りはじめた後に魅せる圧倒的な軽やかさ。黄色や暖色系が本当によく似合う方です。衣装がふわりと舞う様は風もまとう天女のよう

リプニツカヤさん演じる成長した紫の上の登場も、光源氏と同じく鮮やかというか、会場の空気を一変させました。この「娘は、それはそれは美しく成長しました――――」という映像が早送りで変化&移り変わるような表現は、登場の際にスケーターが飛び出して来る時のスピード感も影響してる…!?本当に豊かで瑞々しい時間でした。朧月夜が天女なら、紫の上は妖精のよう。

紫の上に一目惚れをした朱雀帝。はじめは礼を尽くして紫の上に近付いていきます。紫の上も困惑しながらも、少しずつ距離が縮まっていき…。ここが台詞なく進むシーンにも関わらずお二人のフィジカルが余りにも雄弁で…凄かった…。

桐壷帝の死後、紫の上を望んだ朱雀帝に対して、抜刀する光源氏。ここで光源氏が刀を抜かなければ、別の未来があったかもしれない異母兄弟の決別となる決定的なシーンです。このシーンで、頭中将が刀を抜かないのが記憶に残ったのですが、あとで生きて来ました。

海のシーンは、本当にスタッフさん&キャストさん達の頑張りによって氷上に!!!!荒ぶる大海が!!!!たしかに見えました!!!!接舷して戦うシーンの臨場感。その後、船頭のいない小舟がぐるぐると無慈悲に流される描写は、まさに潮流に巻き込まれる舟そのものでした。これは、船を回すキャストさんがたの圧倒的技術の賜物だと思います。本当に圧巻。

最後に光源氏が波にさらわれていくシーンの演出は、氷上でないと出来ない演出で……!初見で、えっ!!!!あっ!!!!!と声にならない声が。すごい。

波岡一喜さん演じる長道が本当に良い味を出していて、お隣の方が「彼がある意味、1幕の主役…!」と、おっしゃっていて激しく同意

二幕

轟く太鼓を合図に、海賊たちのお祭りから二幕がスタート!ここも明確に1幕の雅な雰囲気とは別の日本の美というか、たくましさ、豊かさを見せようとして下さっている感じがして、瀬戸内の出身としてはとても嬉しかったです。

個人的に胸を射抜かれたのが咲風を演じる村上佳菜子さん。ジュニア時代から拝見しているのですが、スケーターとして新たな一面を魅せて頂いた気持ちです。圧倒的な生命力、ぱっと周りを照らすような明るさ。縦横無尽に駆け巡り、海賊の仲間たちを、そして、客席をも鼓舞する存在感。

都のシーンでの紫の上と朱雀帝の演技は、あまりのたおやかさ、美しさに、これはぜひ海外の方にこそ観て頂きたい…!フィギュアスケートで苛烈なシーンを見ることは少ないので、このシーンの最後ではトップアスリート二人がフィギュアスケートのスピード感で、あの鮮烈さを描くと、こんなに人を引きつけるものになるのか……と圧倒されました。もっとフィギュアスケートでこそ、こういった感情・表現が観てみたいです。

途中、都の人々に長道が「心がないのか!」と言われた後、長道自身は「あぁ、あるよ」と宣言していたのが耳に残って。この台詞が本心かそうでないかの解釈が長道像が大きく変わります。長道自身に心があるとしたら、とても、辛い。弘稀殿を思う心が彼を罪に走らせるのなら、いっそ心など無かった方が彼自身は楽だったのではないか…と。観る方によって捉え方が変わるかと思います。

光源氏を思い悩む、柚希礼音さん演じる松浦。昔から周囲の期待に応え、また周りの人々を深く愛しているが故の困惑。そんな松浦に対して、咲風が全身をつかった真っ直ぐな芝居でぶつかっていくのが本当に最高でした。登場シーンでは、生命力溢れる生き生きとした演技を見せてくれたのに、一転、もがくような遣る瀬無い演技。貴方の気持ちが分かる!=(思いを打ち明けられない)貴方の気持ちが分かる!と、思いを寄せる相手に言う彼女の心の揺れ動きがとても素晴らしくて。

…そうなんです。後からパンフレットの”松浦に恋心を抱く咲風”というテキストを見て驚きました。

劇中の咲風は、松浦の妹分…という立場を越え、愛する人を前にした人間そのものだと感じていたので…それが演技だけで伝わって来たのは村上さんの表現力があってこそ。バラエティ番組など、様々な場所でご活躍の方ですが、ぜひステージでの姿も定期的に拝見したいです。

氷艶は音楽劇という事で、歌唱シーンもございます!川井憲次さんの楽曲により物語が彩られていくのですが、特に都へ戦いに赴く光源氏たちの合唱シーンで会場のボルテージは最高潮に。
光源氏の掛け声と共に、松浦が高らかに歌いあげ、頭中将の鼓舞するような歌声が加わり、主演である光源氏を演じる高橋大輔さんも真っ直ぐな歌を!!!圧巻の歌声でした。こんな魅力もお持ちの方でしたか…!!音楽をご担当の川井憲次さんは、元々大好きな作曲家さんなのですが、今回このショーのために書き下ろされた「「幸せをっつ・か・め!!!(ジャーン)」」の楽曲は、アリーナにいる人全てを巻き込むエネルギーに溢れ、最高でした!!!(本日●回目の最高

海での戦闘シーンでは、織田さん演じる陰陽師が空を舞うなど見どころ満載なのですが、咲風の…咲風の話をさせて下さい。松浦が亡くなった後の咲風が…本当に素晴らしかったんです。松浦の亡骸にすぐには近づけず、松浦に向かって宙に浮いた左手から目が離せませんでした。愛する人を喪った強烈な嘆き。ただ静かに松浦に寄り添い、頬を寄せながら全身から発する絶叫のような雰囲気と、さっきまで生き生きと生命力に溢れた彼女との落差に胸がとても傷みました。

都へ光源氏たちが入ってくるシーンで、ひとりだけ、、、、咲風の表情だけ何か違うんですよ・・・!!!!噛み締めるように下を向いた後、潤んだ目で顔を上げキッと睨みつけるような表情。あ、この子だけ、みんなと同じ方向を向いているけど他の人と戦う理由が違う。そう思わせてくれる芝居でした。村上佳菜子さんすごいです。圧倒的な引力。

御所での戦いのシーンでは、頭中将が一瞬でしたが朱雀帝に切りかかったのが記憶に残っています。1幕では、光源氏のために御所で抜刀出来なかった頭中将。お前たち!と慣れ親しんだ都の人々や松浦のような無関係の存在が、凶刃の前に倒れるのはさすがに我慢ならなかったんだと思います。あぁ、だから都での長道の凶行を、再登場した頭中将に見せたのかと、前のシーンを思い出して合点がいきました。都に残り、都の変化を見続けた頭中将も、また変わり、刀を抜いたのか、と。

そして、朱雀帝が弘稀殿女御を刺した後、スポットライトはあまり当たっていなかったのですが長道の茫然自失の佇まいが…兎に角素晴らしかったです。とても大切な人を、大切な人が一番愛した者の手で喪ってしまった…。

そして、降り積もる雪の中での光源氏のソロ演技は圧巻でした。愛しさ、切なさ、悲しみ、苦しみありったけの感情全てが詰め込まれたソロ…!!!競技時代から世界一のステップと呼ばれた高橋さんのスケーティングにさらに磨きがかかり、照明・音楽・衣装、その他すべての要素を味方につけることで、より一層、光源氏の世界に引き込まれることに。

最後は、平原綾香さん演じる藤壺の「あの方は、月でございました―――。」という台詞で物語が綴じるのですが、この台詞…冒頭のナレーションと同じなんです!!!最初と、最後に込められた思いの違いに気づくと、あまりの切なさに胸が締め付けられるような感覚に。

誰が想像しただろう、これほどの光源氏を。」という公演のキャッチコピーどおりのものを観させて頂きました。本当に凄かったです…。